~物語~
とある獣妖怪の貴方。(姿はご想像にお任せします)
道に迷ってしまい気付いたら見知らぬ神社に迷い込んでいました。
駄目元で自分と同じ妖怪がどこかに居ないものかと周りを見渡すと…
九本の尾を持つ狐と二つに分かれた尾を持つ猫が神社のお賽銭箱の所におりました。
こちらに気付いた狐が走って近付いて来ます。
「キミキミー!きょろきょろしてどうしたのー?何か探しものー?
あ!初めましてだから最初に自己紹介しなくちゃね!ボクはきゅうび!キミはー?」
ハキハキとした元気いっぱいな声に少し圧倒されながらも名前と迷子であることを伝えると、
「迷子かぁ…きみの住処はどこー?かまいたちさんなら普段から町の見回りしてるし、場所に詳しいから分かるかも!
ボクが聞いてくるよー!」
と提案してくれたが、自分の住処が思い出せない貴方。
「うーん…じゃあじゃあ!思い出すまでキミもこの神社に一緒にいようよ!楽しいよー♪」
きゅうびがそう言って間もなく
「はぁ…何勝手なこと言ってるの…こまにいに怒られるよ…」
お賽銭箱の前でだらんとしている猫がきゅうびに向かってため息交じりに言う。
「きっと大丈夫だよ!あ、あの子はねこまたって言うんだ!じゃあ早速キミの寝床を…」
「何許可無く勝手に進めてるんですか…これ以上騒がしくなるのは懲り懲りです。」
「そんなこと言いながら、何だかんだ楽しんでるように見えますけどね、僕は。」
後ろから二つの声がし振り向くと、先程まで神社の入り口の両脇にあった二つの狛犬像が動き出していた。
「ん…?見ない顔だな…どこから来た?」
そう言いながら入り口からゆっくりこちらに向かって歩いて来る黒い体に片目に傷、強面な鎌の両爪を持つ彼は先程きゅうびが言っていたかまいたちだろう。
「見回りがてら寄ってみたんだが…何の騒ぎだ?」
「あのねあのね!この子がこの神社に迷い込んで来ちゃって、帰ろうにも自分の住処を思い出せないんだって!
だから、思い出せるまでこの神社に一緒にいようって話してたの!思い出す手がかりとかも一緒に探していこー!!
わー!!また楽しみが増えるー♪」
「だから勝手に…」
「そういうことなら一緒に探そう。こまいぬ兄、俺からも頼む。なに、ずっとという訳ではないだろう。」
「う…あーもう…しょうがないですね…さっさと思い出してさっさと出て行ってくださいよ!」
かまいたちには逆らえないのか、言うことを素直に聞くこまいぬ兄と呼ばれていた藍鼠色の狛犬。
「ふふ…また賑やかになりますね。よかったですね兄さん♪」
もう一匹の、弟であろう少し黄色みを帯びた灰色の狛犬がニコニコしながら兄に向かって言う。
「あのね!今ここには居ないんだけど、大きな煙管を背負ったたぬきさんもいるんだよー!
旅が好きで色んなところに行ってるんだ!ここには息抜きでたまーに泊まりに来たりするよー!
えへへ、お友達が増えて嬉しいなぁ♪」
こうして貴方は、きゅうび達と共に自分の元の住処を思い出すための手がかりを探しながら、日々繰り広げられる皆のゆるいやり取りも楽しみの一つになっていきました。
無事見つけることが出来るよう、この神社の巫女である私も祈っております。